むかしむかし、ある所で二人の少年が遊んでいました。
二人の少年は家が近く、仲も良かったのですが、年が五つ違っていました。
むしろ子供をあやすように、十二歳の少年が七歳の少年と遊んでいたのです。
ところがその時、年上の少年が転び、服が破れてしまったのです。
年下の少年は何を思ったのか一人で家に帰りました。
そしてお母さんに一本の針と長い糸をおねだりしました。
年下の少年は、年上の少年の服を縫ってやろうと思っていたのです。
お母さんに事情を話し、針と糸を持って家から駆け出しました。
ですがあまりに急いでいたせいでしょう。
少年は泉の近くて石につまずき、針を泉の中へ落としてしまったのです。
少年はとても困ってしまいました。
すると、どうでしょう。
不思議なことに泉の精が姿を現し、こう尋ねるのです。
「お前が落としたのは、この銀の針かえ?それともこちらの金の針かえ?」
「いいえ、違います」少年は正直に言いました。「ぼくが落としたのは、普通の鉄でできた針なのです」
「まあ、お前は感心な子供だこと。ごほうびに落とした鉄の針と銀の針と金の針をあげるとしよう」
「ありがとうございます」
少年はお礼を言うと、年上の少年の元へ走り出しました。
そして年上の少年の服を縫うとき、ためしにと金の針を使ってみたのでした。
しかし金というものは金属の中でも柔らかいものなので、うまく縫うことができません。
次に銀の針をためしてみると、こちらはきちんと縫うことができました。
「ありがとう」年上の少年は言いました。「しかしどうしてそんな針を持っているんだ?」
年下の少年は包み隠さず話しました。
すると年上の少年は驚いて言います。
「それは金の斧の話に出てくる泉じゃないか」
「金の斧の話って、なんのこと?」年下の少年は、そのおとぎ話を知らないようでした。
年上の少年は、おとぎ話を語り、教えてあげました。欲をかいて「金の斧を落としました」と言ってさんざんなめにあった男の話も。
「ふーん。でもぼく、この金の針なんて、いらないや。だってすぐ曲がっちゃうんだもの」
その言葉に、年上の少年の目が光ります。
金の斧の話は普通の鉄の斧を落としたくせに金の斧かと聞かれてそうだと言って失敗しました。では金の針を落として、正直に答えてみたらどうなるだろう?
「君がいらないんだったら、それをぼくにくれないかな」年上の少年は言います。
「うーん。どうしよう。きれいだからお母さんにあげたい気もするんだよな」
「だったら銀の針のほうがいいんじゃないのかい?こっちも充分きれいだし、それに丈夫だ」
年下の少年は少し考えました。
そして言います。
「そうだね。丈夫な方がお母さんも喜ぶだろうし、金の針はあげるよ」
こうして金の針を手に入れた年上の少年は、次の日にこっそりと泉の中へ金の針を投げ入れました。
少年は、わくわくしています。ダイヤモンドの針とかプラチナの針とか聞かれるのかな。そしたら金の針って言うんだ。そういえばきっと、全部の針をもらえるはずさ。
はたして、泉の精が現れ、少年に問いかけました。
「お前が落としたのは、このプラチナの針かえ?それとも不思議な力を持った石でできた、この針かえ?」
「いいえ、違います」少年は答えます。「ぼくが落としたのは金の針です」
「まあ、お前は感心な子供だこと。ごほうびに落とした金の針とプラチナの針と不思議な力を持った石の針をあげるとしよう」
そうして少年は三つの針を受け取りました。
プラチナの針は予想通りでうれしかったのですが、問題は不思議な力を持つ針のほうです。
少年はその不思議な力とは何のことなのか、いろいろ試してみたけれど分かりません。
それどころか、日に日に少年の体力は衰え、数ヵ月後に死んでしまいました。
この話を年下の少年から聞いた人たちは口をそろえてこう言いました。
「やっぱり、欲をかいちゃあ、いけないね」
不思議な力を持った石でできた針は封印され、教会に預けることになりました。
ですが泉の精は罰としてその針を少年にあげたわけではありません。
その不思議な力というのは放射線のことなのです。
キュリー夫人がその鉱石、ラジウムを発見したのはそれから数百年後のことでした。
二人の少年は家が近く、仲も良かったのですが、年が五つ違っていました。
むしろ子供をあやすように、十二歳の少年が七歳の少年と遊んでいたのです。
ところがその時、年上の少年が転び、服が破れてしまったのです。
年下の少年は何を思ったのか一人で家に帰りました。
そしてお母さんに一本の針と長い糸をおねだりしました。
年下の少年は、年上の少年の服を縫ってやろうと思っていたのです。
お母さんに事情を話し、針と糸を持って家から駆け出しました。
ですがあまりに急いでいたせいでしょう。
少年は泉の近くて石につまずき、針を泉の中へ落としてしまったのです。
少年はとても困ってしまいました。
すると、どうでしょう。
不思議なことに泉の精が姿を現し、こう尋ねるのです。
「お前が落としたのは、この銀の針かえ?それともこちらの金の針かえ?」
「いいえ、違います」少年は正直に言いました。「ぼくが落としたのは、普通の鉄でできた針なのです」
「まあ、お前は感心な子供だこと。ごほうびに落とした鉄の針と銀の針と金の針をあげるとしよう」
「ありがとうございます」
少年はお礼を言うと、年上の少年の元へ走り出しました。
そして年上の少年の服を縫うとき、ためしにと金の針を使ってみたのでした。
しかし金というものは金属の中でも柔らかいものなので、うまく縫うことができません。
次に銀の針をためしてみると、こちらはきちんと縫うことができました。
「ありがとう」年上の少年は言いました。「しかしどうしてそんな針を持っているんだ?」
年下の少年は包み隠さず話しました。
すると年上の少年は驚いて言います。
「それは金の斧の話に出てくる泉じゃないか」
「金の斧の話って、なんのこと?」年下の少年は、そのおとぎ話を知らないようでした。
年上の少年は、おとぎ話を語り、教えてあげました。欲をかいて「金の斧を落としました」と言ってさんざんなめにあった男の話も。
「ふーん。でもぼく、この金の針なんて、いらないや。だってすぐ曲がっちゃうんだもの」
その言葉に、年上の少年の目が光ります。
金の斧の話は普通の鉄の斧を落としたくせに金の斧かと聞かれてそうだと言って失敗しました。では金の針を落として、正直に答えてみたらどうなるだろう?
「君がいらないんだったら、それをぼくにくれないかな」年上の少年は言います。
「うーん。どうしよう。きれいだからお母さんにあげたい気もするんだよな」
「だったら銀の針のほうがいいんじゃないのかい?こっちも充分きれいだし、それに丈夫だ」
年下の少年は少し考えました。
そして言います。
「そうだね。丈夫な方がお母さんも喜ぶだろうし、金の針はあげるよ」
こうして金の針を手に入れた年上の少年は、次の日にこっそりと泉の中へ金の針を投げ入れました。
少年は、わくわくしています。ダイヤモンドの針とかプラチナの針とか聞かれるのかな。そしたら金の針って言うんだ。そういえばきっと、全部の針をもらえるはずさ。
はたして、泉の精が現れ、少年に問いかけました。
「お前が落としたのは、このプラチナの針かえ?それとも不思議な力を持った石でできた、この針かえ?」
「いいえ、違います」少年は答えます。「ぼくが落としたのは金の針です」
「まあ、お前は感心な子供だこと。ごほうびに落とした金の針とプラチナの針と不思議な力を持った石の針をあげるとしよう」
そうして少年は三つの針を受け取りました。
プラチナの針は予想通りでうれしかったのですが、問題は不思議な力を持つ針のほうです。
少年はその不思議な力とは何のことなのか、いろいろ試してみたけれど分かりません。
それどころか、日に日に少年の体力は衰え、数ヵ月後に死んでしまいました。
この話を年下の少年から聞いた人たちは口をそろえてこう言いました。
「やっぱり、欲をかいちゃあ、いけないね」
不思議な力を持った石でできた針は封印され、教会に預けることになりました。
ですが泉の精は罰としてその針を少年にあげたわけではありません。
その不思議な力というのは放射線のことなのです。
キュリー夫人がその鉱石、ラジウムを発見したのはそれから数百年後のことでした。
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