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空の青さが、やけにムカツク

『揺れるココロ、と高鳴るドウキ』__完全自作の小説・詩・散文サイト。携帯からもどうぞ。
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 とりあえず生きていなければ
 どうにか生き続けなければ
 そのようにして今ぼくは生活を送っている
 蛞蝓みたいに地べたを舐めて
 夏の暑い日に干からびないように

 いっそ誰かに塩を振ってもらえたら
 ぐずぐずに溶けてしまえたならば
 しっぽを振った犬の気持ちですり寄るだろうか
 きれいに消えるような甘い誘惑ならば
 苦痛がないなら浴びただろうよ

 いつも誰かに甘えて寄りかかり
 覚悟もなく怠惰の才を発揮している
 新天地を求め干からびて死ぬ蚯蚓ほどの大望もなく
 安全地帯に囲まれて世界を覗いている
 とびきりの無害さを装って

 装うならば甲冑に身を包み
 せめてもの気概を露わにしてみれば
 出てくるものは聞く者を辟易させる愚痴ばかり
 いつからか戦い方を忘れている
 いつからだろう生き方を忘れている

 いつしか手にとる武器は脂肪にまみれ
 汚泥の中で価値を喪失していた
 いつかは戻り立ち上がれるだろうことを夢見ていた
 しかし夢は夢で終わりつつある
 違う夢の中にいるジャンキーのように
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 三歳になる甥と戯れ、亡くなった父を想った。
 父は、この子が産まれる直前に息を引き取ったのだ。
 あんなに初孫と遊ぶ事を楽しみにしていたのに。
 見上げたところに父の遺影。
 ふと思った。
 子は、父の生きた証し。
 自分が生きていくこともそうだ。
 ならば、血を絶やさず語り継いでいく事こそが最大の親孝行なのかな。
 こんなふうに考えるなんて、私も歳をとった証拠かな。
 アラフォーの谷間世代。
「恋人いない暦=年齢」な、私。
 小さな溜め息が漏れた。
  


 白い機体をなめるようになでる。
 コイツの名前はカルメン。
 惜しいけれども最期の出撃。
 華々しくしく散ろう、二人で一緒に。
 乗り込むコクピットはいつものように馴染んで僕を受け入れる。
 艶めかしく光を反射するカヴァー。
 上下に揺れる機体の中でコントロール、ゆっくり進めて滑走路へ。
 すべての指示は、僕が出す。
 僕とコイツのラストフライト。
 速度をあげて夜の空へと。
 地を離れると加速の重力、空気の浮揚。
 冷静と興奮、判断と高揚、操縦と反応。
 主と従者。
 時に従者は空気の抵抗を受け、主を煩わせ。しかしそのもどかしさが支配欲を増幅させる。
 無断の出撃は最期の足掻き。
 どうせこの国は陥ちるのだ。
 優雅にロール、楽しく急上昇、美しいほどの背面飛行。
 頭上に地上、倒錯した世界からお前と急降下。
 見せつけるように空のダンス。
 乱れるように空のスウィング。
 アップダウンの激しい挑発、右へ左へわがままに。
 解放された抑圧を見せつけるように。
 喘ぐようなアラート。
 やっと出てきた敵国の機体は複数。
 「行くぜ、相棒」乱暴に、時に優しくカルメンの機体をゆらす。
 ロックオンからの激しい離脱の波。
 もう機体は、どの方向にブレているのかすら分からない。
 無数の弾丸に曝され、凌辱される機体。
 けなげな相棒を内側からなでる。
 後方からの激しい衝撃。
 煙をあげて爆発するエンジン。
 望んでいた足掻き。
 求めていた死地。
 爆風で千切れる尾翼の感覚が、むしろ心地よい。
 「相棒、お疲れ」僕は愉悦に浸っていた。「カルメン、最後の花火だ。派手にイこう」
 残弾を、すべて発射する。
 何機かは道連れにできたみたいだ。
 キャノピーにはすでに炎が回り、墜落の地面は迫っている。
 「お前と死ねて、僕は幸せだ」
 僕は笑顔で、本当の最期となる振動に身をまかせる。
  

 夕焼けの色が心に響く。
 まるで子供の夢のように。
 路地裏には青い花が咲いている。コンクリートの割れ目から。
 風を感じながら歩いていると、死んでいる猫を見つけた。
 轢死した猫は血を吐きアスファルトを汚していた。
 飛び出した目や血の流れた鼻に蠅がたかっている。
 チリドッグを食べていたぼくの手は止まり、メロンソーダの缶を落としそうになった。
 路上に死体を晒して、この猫はどんな気持ちでいるんだろう。ぼくは悲しい気分になってしまった。
 これは同情だろうか、それは悪いことだろうか。死体を侮辱する行為だろうか。
 分からないままに見下ろしている。
 猫はどんなガソリンを揺らした乗り物に殺されたのだろう。
 彼、もしくは彼女はどんな気持ちで死を迎えたのだろう。
 いや、どんな気持ちを持っていたとしても、その気持ちはすでに消えてしまった。
 小さな頃に飲んだママのミルクも、流れる小川みたいに駆け回った思い出も無くしてしまったんだろう。
 蠅、死体。
 とても残酷な光景だけれど、どこかの国では腹を空かせた子供たちは、顔にたかった蠅を時には食べ、貴重なタンパク源として摂取している。それすらままならない生まれたばかりのベイビーはミルクも飲めずに死んでいってる。
 どちらが悲惨で、どちらが残酷なのか。
 どうでも良い人生なんて、どこにも無いのに。
 世界はどこまでも平等で、あるがままなのに。
 感じるのは、ぼくの心。
 ぼくが思っているだけ。比較しているだけ。
 蟻のように踏みつけられる生き方だって、歯車のように使われる生き様だって、本当はみんな美しく汗の中で必死に生きる素敵な生活。
 猫のような気ままな生き方も、きっと同じ。意味は同じ。
 車の後部座席で黒い糸を操っている人間だって、本当の意味は同じ。
 ただ生きているんだ。
 自分の家族や大切な物を守りたいだけ。
 きっとそういうことなんだ。
 だけどどうしようもないことなんだ。
 立場が違えば全部が反対になって、武器を取る。
 誰かのために、何かのために。
 それぞれの夕焼けの色を守るために。
 なんて悲しいことなんだろう。どうしてそんなことになってしまうんだろう。
 守るために戦うだなんて。
 誰かのために誰かが傷つき、死んでしまうなんて。
 泣きそうな気持ちになりながら、ぼくは荷物を捨てて猫を抱いた。
 本当はどこかへ連絡するべきなのかもしれないけれど、そうしてしまったら、ぼくの中の大切な何かが、底の無い真っ暗な空間にどこまでも落ちていきそうな気がしてしまったから。
 これから赤い車に乗って、猫が静かに眠れるような場所を探しに出かけよう。
 それからぼくは、旅に出るんだ。
 そうしてぼくは、旅に出るんだ。
 壊れそうな、ぼくの心を取り戻すために。
 果てしなく続くこの道をゆけば、きっと優しく美しい所に辿り着けそうな気がする。
  

 えーんえーん。
 えーんえーん。
 犬が死んじゃったよぅ。
 車にひかれちゃったよぅ。
 えーんえーん。
 えーんえーん。
 急に走りだすから、ヒモが引っぱられて、はずしちゃったんだよぅ。
 お母さん、お父さん、お兄ちゃん、お姉ちゃん。
 タロが死んじゃったよぅ。
 えーんえーん。
 えーんえーん。
 お爺ちゃん、お婆ちゃん、タロが、えーんえーん、車にひかれて、えーんえーん、はねとばされて、えーんえーん、死んじゃったんだよぅ。
 えーんえーん、えーんえーん、えーんえーん、えーんえーん。
  

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