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空の青さが、やけにムカツク

『揺れるココロ、と高鳴るドウキ』__完全自作の小説・詩・散文サイト。携帯からもどうぞ。
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 彼女は急に死んだんだ

 みんなはこう思ってる
 吐息が空気に混じるように
 夢が現実にとろけるように
 海に一滴の水が落ちるように
 急に
 急に死んでしまったと

 だけどホントは違うんだ
 ボクだけそう知っている
 ボクだけそう思ってる
 彼女が死んだ理由とは
 気づいてしまっただけなんだ


 彼女はいきなり自殺した
 遺書も書かずに死んだんだ
 みんなは彼女を無口という
 みんなは彼女を真面目という
 孤独に押し潰されたのだと

 だけどホントは違うんだ
 彼女にボクは聞いたから
 自殺のヒントを聞いたから

 彼女は言った
 私は特別な人間なの
 と

 彼女は言った
 私は天才なの
 ってね

 だけど気づいてしまったんだ
 きっと気づいてしまったんだ
 自分が吐息でないことに
 自分が夢でないことに
 自分が一滴の水でないことに

 自分が空気の側にいたと
 自分が現実の側にいたと
 自分が海の側にいたと
 だから
 だから死んだ
 自殺した

 気づいたんだ
 彼女はきっと
 気づいたんだ
 頭が良すぎたから

 自分が天才でないことに
 自分の存在が
 見下していた側にいたことに

 だから死んだ
 彼女は絶望した
 きっと
 きっと誰にも分からないくらいに深く
 深く
 深く
 深く

 ボクだけそう知っている
 ボクだけそう感じてる

 なぜならボクも同じだから
 同じ種類の人間だから

 彼女の囁きが聞こえた気がする

 彼女のメッセージ
 次はあなたの番

 彼女のつぶやき
 早くこちらへ来てみなさい

 魅惑な言葉
 悪魔の誘い

 同情と友情と
 ありったけの怨みを込めた
 ボクと彼女の
 秘密の呪い
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苦しみを詰め込んで
疲れを詰め込んで
狂い咲く悲しみも
何もかも入るリュックに、ありったけ

辛さを包み込んで
怒気を包み込んで
クソみたいな生きざまを
すべて包み込んでしまうバッグに入れて

虚しさと溶け込んで
弱い体と溶け込んで
人と触れ合う矯慢な賎しさを
混沌と混乱の色をしたビニール袋にブチ撒けて

リュックと、バッグと
ビニール袋のすべてを飲み込んで
それでもやっぱり死ぬのは怖い
このままずっと生きてくよりも
  

 男と再会し、久し振りに抱かれた女は不思議な気分だった。
 前に一度きり抱かれた時の関係は、有名バンドのボーカリストとファン。今回のきっかけは、女の働く地方へ男がライブに来た事だった。
 店の女と客。
 立ち位置が逆転している。
 さらに言うなら、女は今、男のファンではない。
 男のバンドは解散しており、ソロ活動を行っている。昔ほどの勢いはなくなっているものの、一部固定のファンや曲調を変えたおかげで、一定の人気を保っている。
 昼時近い午前中、女は男の寝顔を見つめている。
 一度抱かれた男に、初見のように口説かれ、抱かれた。
 それはどこまでも不快であり、忌まわしい気分であった。
 今ではテレビで男の顔を見るのも嫌だし、歌声が聞こえるたびに吐き気を覚えるほど強い嫌悪感を持っている。
 女は汚れを落とすようにシャワーを浴びに行った。
 服を着ようと寝室に戻る。
「やあ」男は裸のままベッドから上体を起こした。「食べる物はないかい」
 二人は簡単な会話をし、女の作ったベーコンエッグとトースト二人分を平らげた。
 ブランチが終わると、気まずい雰囲気になっていた。
 男はトーストをかじりつつも女の態度に気づいていたのだ。
「やけに不機嫌だね」男は沈黙を打ち破る。
「あなたがバンドを解散した理由って、何?」
「朝から重い話をするね」男は頭を掻きながら言った。
「今聞かなくちゃ、二度と尋ねる機会はないでしょ」
「オレがライブに来た時に、また会えばいいさ」
「もう二度と」女は唇を噛んだ「あなたに抱かれるのは嫌」
「なに、その言い方」男は怪訝な顔をしながら、断りもなくタバコに火を点ける。「前にも寝たことがあるような言い方じゃない」どこかに薄笑いを漂わせながら。「そんな話はやめようぜ」
 女は答えず、窓を開けタバコの煙を外に流す。それから灰皿替わりの空き缶を男を投げつけた。
「なんだよその態度」男が怒鳴る。
「いいから答えて!」ピシリと言う。
 女に気圧されたのか、男は低い声で答える。
「あの噂なら本当だよ」表情が強張る。「若かったんだ。若者たちの代弁者みたいに、世を儚むような厭世的な歌を作ってた。それがコアな客層に当たってさ、信者みたいな奴も出てきて、歌詞もどんどん過激になった。オレ達のバンドも注目を浴び始めた時、一人のファンが自殺した。遺書のほとんどがオレの歌詞からの引用だったよ」
「━━それで?」
「厳しいね」男はタバコの灰を空き缶の飲み口に落とす。「それで怖くなった。世間の目以上にファンの目が。『大人になるのは腐ること』そんな歌詞を本気にして死んでしまう人間が居るってことにね。それから、事務所もコトを大きくしたくなかった」
「だから活動を中止して、期間を空けてからソロ活動を始めたの」
「そんな感じかな。でも詳しいね。昨日の感じじゃ、オレのことなんて全然知らない様子だったけど」
「それは詳しいわよ。昨日は仕事。あたしはあなたのバンドのファンだったんだから」
「なんだ、じゃサインでも」緩みかけた男の表情が、一瞬で険しくなる「バンド?」
「そう。今はあなたを好きじゃない」
「その言い方」男はタバコを吸い、苛立たしげに吐き出した。「何様のつもりだよ、お前」
「自殺したファンの友人よ」
 男は混乱した。
 その間にも女は自殺したファンのごく身近な者だけの知る事実を話す。
「信用した?」
「それは」男は言う。「すまなかった」
「バンドの解散に、やっぱり信念とかっていうモノはなかったんだ」女は言った。「歌詞がウケれば過激にして、活動再開してからは愛だの恋だの歌って結婚して、今では甘い歌、歌って一児のパパ。だけどすぐに上手く行かなくなって離婚して、そしたらバラードにしがみつく」
「世の中、綺麗事じゃないんだよ」男は荒々しくタバコを消し、空き缶に捨てる。「事務所の方針もあればタイアップしているスポンサーの意向もあるんだ」
「どこが! 全部自分の都合じゃないの! 解散したのは怖いから、結婚したのはイメージアップ、人気が落ちて離婚して」
「それがミュージシャンってモノだ! アーティストってモノなんだよ!」男は空き缶を壁に投げつけた。壁紙には傷が付き、空き缶は虚しい音を立てて床を転がった。「素人のクセになんなんだ、あれか、自殺した友達へでも謝れってか? 大体な、自殺したコの両親とも話がついてんだ、いくらそのコの友達だったとしても」
「お金で解決しただけでしょ。知ってるの、あたし。あなたはお葬式に顔を出しただけで、後のことは事務所の人が動いただけ。知ってるの。その後、あのコのお母さんは心を病んで、今でも入院しているし、お父さんは心労で亡くなった。全部━━あなたの知らない全部を知ってるの」
「なんだよ気持ち悪い、昨夜オレの誘いに乗ったのは、この嫌がらせをするためだったのか」
「……多分、違う。確認したかっただけ。あなたがどんな人間か。あなたは歌や言葉の影響力を知らない男。そんな人がミュージシャンであるハズがない。アーティストだなんて、おこがましい。あたしの中にある嫌悪感は友達に対する後ろめたさじゃなかった。前に一度、あなたなんて男に抱かれたことへのもの。人生の汚点。あたしも自分勝手な女ね」
「前━━に……?」
「バンドを追っ掛けてた頃の話よ。あのコに内緒で、抱かれに行ったの。あのコが自殺する前にね。きっと知らないまま死んだのだろうけど━━ああ、あたしのことを忘れてるのは仕方ないと思ってるから、気にしないで。女なんて星の数ほど抱いてるんでしょ。そんなこと承知の上で寝たんだもの。歌を歌って交尾して、あなたは、ただのカナリアよ」

 数ヵ月後、男は「哀れなカナリア」という曲を発表した。
  

三寒四温とは良く言ったもので、特に今年の温度差には大きな波があるようでございます。
この度、私ことクモリのちハレには、うつと言う精神的疾患がございますため、季節の変わり目には非常に弱く、また、初めての独り暮らしの年越しともあって、作品を書き上げる余裕を失しております。
 いくつかのアイディアや構成のできているものもあるのですが、いかんせん、原稿用紙に向かう気力も奮わず、その事がさらに自分を追い詰めかねぬ勢いに成長しつつありますため、いっそのこと、今は養生し、ブログを暫く休ませて頂きたいと存じます。
 なお、ブログ復帰のメドは自分にも分かりかねますので、アバウトに年末年始頃とさせて頂きたく存じます。
 誠に勝手ではございますが、復帰の折りにはこれまでと同様なるお引き立てを下さりますよう、お願いを申し上げて、しばしの休息を取らせて頂きます。
 重ね重ね申し訳なく感じいっておりますが、これにて御詫びの言葉と替えさせて頂きます。
 クモリのちハレ
  

 風が鳴いていた、木枯らし。
 気温の谷間、冷えた夜。
 ベランダに光る網、蜘蛛の糸。
 長い脚に弄ばれる、もう一つの命。
 糸に巻かれる屈辱と恐怖、そして絶望。
 そうして、諦観。
 否、否否否。

 節足動物に、感情があるのだろうか。
 本能以外に、自我や意識が存するのか。
 人とは違った、基幹意識を持つものなのか。
 帰納でも演繹でもない思考法、それは何処。
 飛躍も推測でも憶測でもない、手法。
 アトランダムなプログラムとも、異なる方式であるのは確か。
 何らかの作為に依らずして、生存本能の確立は成し得ない。

 自己保存と繁殖能力への渇望は、遺伝因子が命じている。
 人と遺伝の違い、それがすべてか。
 人と他の哺乳類の差とは、何ぞや。

 遺伝子の違い、配列コードの組み違え。
 いわゆる動物、畜生獣に時間の概念は無いと言う。
 時の流れを把握出来るのは、人だけなのか。
 しかし人にもよって、遺伝子の違いは有る。
 多少の誤差だが、看過は出来ぬ。
 盲目の者に色を伝えるは難しく、無痛無汗症患者に痛みを教えることも出来ぬ。
 一般人は、共感覚を得られるだろうか。
 なればそれは、個人単位の問題。
 曰く、クオリア。
 つまりは、人と人とは別の世界に住んでいる。
 それを擦り合わせるのが、社会の規範常識モラル。

 外れた者は、別の掟に縛られる。
 厄介者は、知識と知恵。
 故に人は、死ぬまで戦争を捨てられぬ。
  

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