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空の青さが、やけにムカツク

『揺れるココロ、と高鳴るドウキ』__完全自作の小説・詩・散文サイト。携帯からもどうぞ。
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 上京してから二ヶ月。同居人から聞いた話。
 といっても、同居人と呼んで良いのかどうか分からない。
 彼は初めからこの部屋に住んでいたからだ。ルームシェアとも違うのだけれど、とにかく彼の話は信用できる。
 話を戻そう。
 ある日、一人の会社員が会津若松への出張を命じられたという。
 現地では複数立ち寄ることもあって、会社の車で北上することとなった。
 会社では、五年以上使い回したナビゲーションシステムを新品に替えたばかりということで、会社員は嬉しくなり、カーナビをいじり回していたという。
 そのうちに会社員は高速道路を使うよりも、ナビの機能を使って普通道路を走ってみたい気持ちになったらしい。
 そうして出張の日、会社員は日の昇らぬうちから車を走らせた。上野から出発して埼玉県を抜け、北関東へ入る。バイパスの両脇には田畑が多くなり、田舎の香水たる家畜や土の混じった臭いが車内を充たす。その頃には太陽も昇り、運転にも疲れてきた。そこで会社員は朝食を兼ねてコンビニへ寄り、駐車場で休憩することにしたという。
 田舎の駐車場は広いものの、車内の窮屈さは変わらない。シートを倒して伸びをした。
 会社員は、疲れと朝起きの寝不足がたたって眠り込んでしまった。
 起きた時には、とっくに昼を過ぎていたらしい。
 慌てたけれども、幸いにして急ぐ仕事ではなかったので、夕方前には会津若松へ着くだろうと高をくくっていたらしい。
 だが実際にら峠や山道に時間がかかり、福島県に入った頃には日が沈んでしまっていた。
 会社や出張先の関係者に何度も詫びの電話を入れたらしい。
 会津若松へは何度か高速で来ていたため、見知った道路や風景に安堵した時には深夜になっていた。
 事前に連絡していたおかげで、出張は明日からでも良いことになっていた。が、一社だけ、担当者が深夜までの残業があるので、どうせだったら来て欲しいという会社があった。
 道中、お詫びの手土産も自費で買ってきていたし、先方が言うなら行かないわけにはいかない。
 ナビの目的地をその会社に設定し、会社員は車数の少ない道を進んで行くことにした。
 途中、車は赤信号で停車し、会社員はこの時、異変に気付いたらしい。
 本来右折する交差点よりも手前の道を右折するように、ナビゲーションのルートは示されていたのだ。
 あれ? 会社員は思ったらしい。確か交差点までは一本道だったはず、と。けれどこう思い直したという。新しい道が出来たのかな、それとも見落としていた細い脇道でもあって、そちらの方が近道なのかもしれない。
 最新式のカーナビだということを思い出し、会社員は後者の可能性に期待した。そうでなければ新しくした意味がない。こんなに遅れてしまったのだ、それくらいの埋め合わせをしつもらわなくては。
 会社員は自分の失態を何かのせいにしたかった。
 信号が青になると車を走らせ、ナビの指示通り右折する。
 その道は草に邪魔されて見付けにくい脇道だった。舗装すらされていない。
 しかしいつまで走っても目的の会社に着かない。いつもなら十分もすれば着くはずが、三十分経ってもまだ着かない。道が細くてスピードを出せないせいもあるけれど、いくらなんでも遠回りに過ぎる。
 そう思って会社員は車を停め、カーナビを操作した。すると、
 するといつの間にか目的地が変更されていた。何もない森の中へ向かっているらしい。
 会社員は苛立っていたけれど、どうしようもない。舌打ちをして目的地を再設定する。だが、なぜか受け付けられず、どうにも登録されない。
「最新式型っていうのはバグが多いから嫌なんだ」朝の喜びはどこへやら、会社員は愚痴ったという。
 Uターン出来る場所を探そうとトロトロ走っていると、強い衝撃に襲われたという。
 バックミラーを見ると、無灯火の車が追突してきたらしい。
 色色と腹立っていた会社員は文句を言おうと外へ出ようとした。所が後ろの車は一度バックし、さらに追突してきたので、車を降りることが出来なくなってしまった。
 無灯火の車は何度もグイグイ押し進める。ブレーキを強く踏んでも馬力は後ろの車の方が上。いつしか車は崖の頂上に押し上げられていたという。
 そこから見えたのは、深い闇。
 会社員は崖から押し出され、即死したという。
 追突してきた車は、以前その崖から落ちて死んだ人の怨念だったらしい。
 どうして同居している彼がそこまで詳しく知っているかって?
 答えは簡単。その会社員が彼だからだ。つまり私は幽霊と同居しているってわけ。
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