忍者ブログ

空の青さが、やけにムカツク

『揺れるココロ、と高鳴るドウキ』__完全自作の小説・詩・散文サイト。携帯からもどうぞ。
[ 88 ] [ 87 ] [ 86 ] [ 85 ] [ 84 ] [ 83 ] [ 82 ] [ 81 ] [ 80 ] [ 79 ] [ 78 ]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

  

「何だよテメェ」
 金髪の男、ケンジが短髪で筋肉質な男、タカにそう言うと、上目で睨んだ。
「お前こそ何者だ」タカは動じない。「俺はユミと三年以上付き合ってる。浮気なんだろ、ユミ。魔が刺すってこともあるんだろう。今回だけは許してやってもいい」
 彼の悠然とした態度に、ケンジがキレた。
「こっちはユミと五年以上も付き合ってんだ! 三年だと!? ユミ、どういうことだ」
 ユミは長い髪をくしゃくしゃにしながら、自室のソファで言い訳を考えている。
 まさかケンジがこんな時間にくるなんて、ユミは思ってもいなかった。
 タカは文武両道の理想的な男で、とある大企業で働いている。一方、ケンジは昔から不良の仲間とツルでおり、夜は歓楽街で飲み歩いているはずなのだ。
 昼間はケンジと会い、夜は真面目なタカと会う。これがパターンになっていたのだ。さらに悪いことには、タカは空手の有段者であり、ケンジも不良仲間の間では、腕っぷしが強いと評判なのだ。
 油断大敵とはまさにこのこと。ケンジに今夜は用事があるとメールをしておけばよかった。
「五年だって、それがどうした」タカが言う。「愛の深さは付き合った年月とは関係ないだろう。本当にお前を愛しているなら、俺と付き合うことはなかっただろうよ」
「ふざけるな」ケンジが怒鳴る。「ユミは俺を愛してるんだ。そこにテメェが割って入ってきただけだろうが!今までユミとの間で、別れ話なんて一回も出たこともない」
「お前がキレるのが恐かっただけだろうよ」それからタカはユミに優しい笑顔を見せた。「さあ、今なら俺がいる。恐がらなくていい。こいつと別れるって言ってくれ」
「んだとコラッ」憤りも隠さずにケンジが反発する。「調子に乗ってんじゃねーぞ」
 ケンジはタカの襟元を掴んだ。
 反射的にタカはケンジの腕を捕まえる。
「やめて!」ユミは叫ぶ。少しの恍惚とともに。男二人が自分のために争っているのだ。この私を求めて。「私のためにケンかはしないで」
 静電気が帯電しているような沈黙。
 掴み合う二人の影が、カーテンに映っている。
 一触即発な雰囲気。
「――ユミ」タカが静かに言った。ケンジの腕を離す。「どっちをお前が愛しているのか、それが一番大切なんだ。正直に言ってくれ」
 ケンジもタカから手を離し、真剣な目をしてユミを見つめる。
「正直に……」そんなこと、言えるはずがない。ユミはそう思い、悩んだ。
 タカは質実剛健、会社でもエリートコースを進んでいる。客観的に見て、こちらに付く方が将来性もある。しかし二股がバレてしまった後、今まではわがままを聞いてくれていたが、その態度は変わるだろう。立場が逆転し、束縛されるかもしれない。エリートにありがちなプライドを彼も持っているため、しこりを残してしまうのは確実だ。
 対してケンジの方はというと、こちらには長年付き合ってきた愛着がある。見ていてハラハラする行動も起こすが、そこが逆に魅力的でもあるのだ。彼自身がそもそも何度も浮気をしており、今回の事だって大目に見てくれるかもしれない。さらにいえば、エリートより自分を選んでくれたという事実が、彼の屈折したコンプレックスを満たし、女遊びも少なくなるかもしれないと思える。
「選べないわ」絶叫するようにユミは言った。「どっちも同じくらい愛してるんだもの」
「何言ってんだ!決めろ!」タカの激昂。初めてみる彼の威圧にユミは戸惑うが、彼は気にせず感情に任せた。「諸悪の根源はユミ、お前なんだよ!」
「諸悪の根源……」ケンジがつぶやく。「そうだな、全部ユミのせいだ。こんな女、ボロボロになるまでヤッちまって、捨てればいーんじゃねーの?」
 タカはその言葉にビクリと反応する。が、少し冷静になり、考える。
「え、ちょっと待って、どういうことよ」ユミは時間を稼ぐのに必死だ。「だってケンジにも不満があって、安定性のあるタカと付き合いだしたんだし――」
 ユミが口を滑らせたと気づいた時には遅かった。
「じゃあ、俺は安全牌の代用品ってわけか」タカが言う。
「俺に対して不満があるんだな」ケンジも言った。
「この際だ」タカがケンジに言う。「その話、乗った。未練が残らないよう、二人で思い切りヤろうぜ」
「ああ」
 タカがユミを押し倒し、ケンジがそこに躍り掛かった。

 ――数時間後。
「――失神するなんて初めて」ユミは言う。「凄く、凄く良かったわ」
「うむ」タカは頷く。「こんなに興奮したのは初めてだ」
「俺も俺も」ケンジが同意する。「この際さぁ、三人で付き合うって、どうよ。なんかそれでもいいような気がしてきた」
 タカは一瞬驚くが、少し考えて言う。
「いいかもしれない」
「私も」
 三人は合意し、三人で付き合うようになった。

 ※ これは犯罪です。真似しないで下さい。
   同様に不倫や浮気、二股も人を傷付けます。くれぐれも自制してくださりますように。
PR
  

この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード
無題
ハラハラしながら読んで最後で笑っちゃいました。
この先も3人が幸せでありますように
2008 / 10 / 16 ( Thu ) 12 : 46 : 40 編集
Re:無題
>この先も3人が幸せでありますように

それはそれで問題がある気もしますが(^_^;)

楽しんで頂けたようで何よりです(^_^)v
【 2008 / 10 / 19 23 : 04 】
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
Google
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
最新コメント
[09/26 小山ぼんさん]
[08/09 眠]
[04/22 眠]
[04/22 眠]
[01/15 眠]
最新トラックバック
プロフィール
HN:
クモリのちハレ
性別:
非公開
バーコード
忍者ブログ [PR]