ぼくの作文
六年一組 田畑 水之助
作文のテーマが家族ということで、ぼくはちょっと、困っています。
うそをつくわけにもいかないと思いますし、本当のことを書くのも、やっぱりいけないような気がするからです。
でも、やっぱり本当のことを書かなくちゃ先生も困るだろうし、みんな知っていることかもしれないので、このさい、全部本当のことを書かなくっちゃいけないのかなぁ。
ぼくの、ぼくのお母さんは、今、いません。法律で禁止されている薬を使っていたことが、警察に分かってしまったからです。
家にお母さんがいた時には、いつもイライラしていた様子でした。
そんな時には、お母さんはいつも、コンビニの物を盗んでしまうのです。
「いけないよ」とぼくが言っても、お母さんは困った顔をしてしまいます。
そんな時のお母さんは、とっても寂しそうな顔になってしまうので、ぼくはとっても、とってもいやでした。
でも、お母さんが薬を使っている時の顔も、ぼくはきらいです。
お母さんのことは好きなのに、そのせいで、いつも、さけてしまうのです。
お母さん、ごめんなさい。
本当は、好きなんだよ。だって、お父さんはいつもぼくたちに暴力をふるうし、そんな時にぼくと妹を守ってくれるのは、お母さんしかいなかったんだから。
お母さんがいなくなって、お父さんの暴力は、もっとひどくなっているんだ。
こわいよ、お母さん。
お父さんは最近、妹のことばっかり叩くようになったんだ。
本当は、ぼくが守ってあげなくちゃいけないんだろうけれど、こわくてできないんだ。
お母さんがいなくなってから、妹が料理や洗濯をしているんだけど、ひとりじゃうまくできないんだ。
ぼくが妹を手伝おうとすると、お父さんはぼくを叩く。
だから、ぼくは、ハラハラしながら妹のすることを見ているくらいしかできない。
妹が料理で指を切ったときに、ぼくがバンソーコーを持っていこうとしても、お父さんのほうが先に、妹へ向かっていく。
「サラダに血を混ぜるな!」
って言って、妹をビンタするんだ。
ぼくはこわくて動けなくなっちゃう。
そんな時に、お母さんがいてくれたらなって思う。
お父さんもいやだし、何もできない自分もいやです。
でも、どうにかしなきゃって、いつも思う。
だけど、どうしたらいいのか分からないんだ。
あと、お父さんは最近、妹の服を脱がして、じっと見るようになった。
時々、ぼくを玄関の外へ追い出して、カギをかけることもある。
妹の悲鳴が聞こえて、ぼくは玄関のすみっこで、ぶるぶる震えていることしかできない。
お父さんが何を考えているのか、ぼくには分かりたくもない!
でも、このままエスカレートしたら、どうなっちゃうんだろう。
あ、お父さんが帰ってきた!
お父さんはお酒を飲んできたみたいだ。
いつもみたく、ぼくたちをぶって寝てしまった。
どうしよう、どうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう。
叩かれたときに思いついたこと、してみようかな。
だめだだめだだめだだめだだめだだめだ。
お母さんが悲しむ。
妹も悲し
本当に妹も悲しむかな。
お母さんは悲しむだろうけど……どうなんだろう。
思いついたことをすれば妹は助かる。
でもひとりぼっちになってしまう。
でもこのままだと妹はもっと悲しくなるかもしれないし、どうしよう。
ほうちょうは持ってきた。
これで切ったら、お父さん、痛いだろうなぁ。
でもお酒でよってるし……でも起きるかもしれないし。ぶたれるのもいやだし。
でも……妹がひとりになっちゃう。
あ!
いけない。
だけど、だけどそうすれば……お母さん、ひとりだけになっちゃう。
お母さん。
お母さんなら、ひとりでも大丈夫かな。
悲しくなったら、また、いけない薬を始めちゃわないかな。
それとも、お母さんもいっしょに来てくれるかな。
そうすれば――
六年一組 田畑 水之助
作文のテーマが家族ということで、ぼくはちょっと、困っています。
うそをつくわけにもいかないと思いますし、本当のことを書くのも、やっぱりいけないような気がするからです。
でも、やっぱり本当のことを書かなくちゃ先生も困るだろうし、みんな知っていることかもしれないので、このさい、全部本当のことを書かなくっちゃいけないのかなぁ。
ぼくの、ぼくのお母さんは、今、いません。法律で禁止されている薬を使っていたことが、警察に分かってしまったからです。
家にお母さんがいた時には、いつもイライラしていた様子でした。
そんな時には、お母さんはいつも、コンビニの物を盗んでしまうのです。
「いけないよ」とぼくが言っても、お母さんは困った顔をしてしまいます。
そんな時のお母さんは、とっても寂しそうな顔になってしまうので、ぼくはとっても、とってもいやでした。
でも、お母さんが薬を使っている時の顔も、ぼくはきらいです。
お母さんのことは好きなのに、そのせいで、いつも、さけてしまうのです。
お母さん、ごめんなさい。
本当は、好きなんだよ。だって、お父さんはいつもぼくたちに暴力をふるうし、そんな時にぼくと妹を守ってくれるのは、お母さんしかいなかったんだから。
お母さんがいなくなって、お父さんの暴力は、もっとひどくなっているんだ。
こわいよ、お母さん。
お父さんは最近、妹のことばっかり叩くようになったんだ。
本当は、ぼくが守ってあげなくちゃいけないんだろうけれど、こわくてできないんだ。
お母さんがいなくなってから、妹が料理や洗濯をしているんだけど、ひとりじゃうまくできないんだ。
ぼくが妹を手伝おうとすると、お父さんはぼくを叩く。
だから、ぼくは、ハラハラしながら妹のすることを見ているくらいしかできない。
妹が料理で指を切ったときに、ぼくがバンソーコーを持っていこうとしても、お父さんのほうが先に、妹へ向かっていく。
「サラダに血を混ぜるな!」
って言って、妹をビンタするんだ。
ぼくはこわくて動けなくなっちゃう。
そんな時に、お母さんがいてくれたらなって思う。
お父さんもいやだし、何もできない自分もいやです。
でも、どうにかしなきゃって、いつも思う。
だけど、どうしたらいいのか分からないんだ。
あと、お父さんは最近、妹の服を脱がして、じっと見るようになった。
時々、ぼくを玄関の外へ追い出して、カギをかけることもある。
妹の悲鳴が聞こえて、ぼくは玄関のすみっこで、ぶるぶる震えていることしかできない。
お父さんが何を考えているのか、ぼくには分かりたくもない!
でも、このままエスカレートしたら、どうなっちゃうんだろう。
あ、お父さんが帰ってきた!
お父さんはお酒を飲んできたみたいだ。
いつもみたく、ぼくたちをぶって寝てしまった。
どうしよう、どうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう。
叩かれたときに思いついたこと、してみようかな。
だめだだめだだめだだめだだめだだめだ。
お母さんが悲しむ。
妹も悲し
本当に妹も悲しむかな。
お母さんは悲しむだろうけど……どうなんだろう。
思いついたことをすれば妹は助かる。
でもひとりぼっちになってしまう。
でもこのままだと妹はもっと悲しくなるかもしれないし、どうしよう。
ほうちょうは持ってきた。
これで切ったら、お父さん、痛いだろうなぁ。
でもお酒でよってるし……でも起きるかもしれないし。ぶたれるのもいやだし。
でも……妹がひとりになっちゃう。
あ!
いけない。
だけど、だけどそうすれば……お母さん、ひとりだけになっちゃう。
お母さん。
お母さんなら、ひとりでも大丈夫かな。
悲しくなったら、また、いけない薬を始めちゃわないかな。
それとも、お母さんもいっしょに来てくれるかな。
そうすれば――
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