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空の青さが、やけにムカツク

『揺れるココロ、と高鳴るドウキ』__完全自作の小説・詩・散文サイト。携帯からもどうぞ。
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「あれ?おれ、いつの間にこんな店にいるんだっけ?」←舌足らず。
「何言ってるの?酔っ払っちゃって」←ギャル系。
「――誰?」―乱れたスーツ。
「さっき名前教えたばっかりなのに、本当に酔ってるのね。えみるです」←媚びた感じ。
えみるはボトルを手にし、ウィスキーの水割りを作る。水の割り合いは多め。
スーツの男は舌が麻痺していて味の薄さに気付かない。
店内は縦長の小さなバー。
窓はなくて暗い照明。
カウンターの奥にいるバーテンダーはがっしりタイプ。
二人はボックス席に座っている。
ボックス席はコの字型で仕切られている。
客の姿は他にない。
重低音のBGM。怪し気な音楽で原曲の曲調はすっかり壊されている。
「あれぇ、何で一緒に飲んでるんだっけ?」←のんびりした口調。
「ひっどーい。さっきのお店で仲良くなったでしょ」←甘ったるく。
「そうだっけ?まあいっか」←まんざらでもない。
バーテンダーがフルーツ盛りを持ってくる。
一礼して席を離れるバーテンダー、カウンターの中へ戻る。
「何、これ。おれ頼んでないぜ」←惑乱。
バーテンダーに文句を言う勇気はないので女に文句を言う。
「フルーツはお酒を飲んだ時に食べるとアルコールを分解してくれて二日酔いになりにくくなるのよ。食べた方がいいわ」←これは本当。
「あ、そうなの。おれ二日酔いひどいから食べとくかなぁ」←酔っているから誘導される。
「そうよ。さっきその話してたから、えみるが頼んどいてあげたのよ」←うそ。
「ありがとー、えみるちゃんは優しいなぁ」←能天気。
スーツの男がフルーツ盛りを食べている間に、えみるは自分のグラスの中身を床に捨てる。
気付かないスーツの男。
自分の水割りを作るえみる。
自分のグラスと男のグラスを巧妙に入れ替えるえみる。
バーテンダーが再びカウンターからボックス席へやって来る。
右手にはチーズの盛り合わせ、左手には冷やしトマトの皿を持っている。
皿を二つテーブルに置き、一礼してカウンターへ戻るバーテンダー。
「えっ?おれチーズ嫌いなんだけど」←顔をしかめる。
「えー、何でー?えみる大好きだよー。カルシウムたっぷりだし、好き嫌いは良くないゾ☆はい、あーんして」←百戦錬磨。
「あーん」←バカ。
もぐもぐと何度か噛んで、噎せたようにおしぼりを手にする。
おしぼりにチーズを吐き出し、包む。
「やっぱダメだ、臭いがダメ」←汚れた口元。
「あら大変、これでも飲んで」←全然大変そうではなく余裕たっぷりに。
ウィスキーのグラスを飲み干す男。
「わーすごーい」←無感動。
「これくらいの強さならまだ飲めるよ」←有頂天。
「頼もしいわ」←さっとグラスに手を伸ばす。
水割りを作るえみる。
その姿をぼんやりと見ながら。
「えみるちゃんの水割りは飲みやすいなぁ」←おだてのつもり。
「あら、そうぉ?」←内心ギクリとしたような感じで。
手早くマドラーで掻き混ぜ、男の前にグラスを置く。
「はい、ドーゾ(はあと)」←胸元を見せつける。
胸の谷間をチラ見してニヤける男。
「ありがとう」←いやらしい笑みを取り繕う。
えみるは酒を飲むフリをして男を観察。
悩殺に成功したと見てホッとする。
男は冷やしトマトをつまみながらグラスを傾ける。
「ちょっと、トイレ」←尿意。
男は立ち上がり、席を離れる。
バーテンダーにトイレの位置を尋ね、その指示に従ってトイレへ向かう。
奥へと消える、男の後ろ姿。

戻ってくる男。
足元はふらついている。
席に戻り、グラスを手にして固まる。
テーブルの上にはボトルが二本増えている。
「何だ、このボトル」←思考停止。
「ああ、お酒が無くなったから頼んどいたの」←平静。
「――って、そんなわけないだろう……そんなに早くボトルが空けるわけない……」←戸惑い。
「えみるも飲んだし~、けっこー濃いめの水割り作ったからそのせいかも」←軽くバカにした感じで。
「おれ、こんなに飲めないし――」←混乱中。
「さっきは強いって言ってたじゃーん」←煽り。
「いや、でもさすがに……下げてもられないかな」←理性取り戻し中。
「何よケチ!もっとジャンジャン頼みなさいよ」←豹変。
「何だよおい、キャッチかよ!ふざけんなよ!」←酔い冷める。
「ナニー、その言い掛かりー。チョームカツク~」←口だけ。
「ムカついてんのはこっちだよ!」←威勢の良い罵声。
出口へ向かう男。
しかしドアの前にはバーテンダーが陣取っている。
「お客さん、お勘定、お願いしますよ」←威圧的。
伝票を差し出すバーテンダー。
振り返る男。
店の奥、トイレの反対側から数人の男が現れる。
「えみるお金持ってないし~。お兄さんが払ってよね~」←もはや他人事。
舌打ちしつつも伝票を手に取る男。
金額を見て目を見開く。
「二十万って――」←声が震えている。
「ボックス席のチャージ料が五万、フルーツ盛りが三万、チーズの盛り合わせと冷やしトマトが合わせて三万、ボトル一本が三万です。何か、問題でも?」←重い声。
腕を組むバーテンダーを前に作り笑いを浮かべる男。
「――ペソじゃ……ないですよね」←あがき。
「ペソではございません。円です」←律儀。
ヘタヘタと腰砕ける男を、店の奥から現れた男達が奥へと引きずっていく。
奥へ消える男達。
カウンターへ戻るバーテンダー。
一仕事終えたかのようにタバコに火をつけるえみる。
悲鳴と怒声、布の裂ける音と打撃音。
打撃音はBGMの重低音と重なり、夜は更けていく。
↑皆さんも、十分気を付けて下さい。
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ふむふむ
こんにちは。

何か懐かしいぼったくりバーの雰囲気を、
なかなか面白い表現されていますね。

矢印は冷静にその状況を俯瞰できるし、
その場にいたような錯覚を覚えます。
暗い話のようですが、何故かスッキリと言った感じです。
結末が予想できるのでそういう感じを受けるのでしょうね。
しかし、文章を自在に操るクモリのちハレさんが羨ましい。
たったかた~ 2008 / 02 / 27 ( Wed ) 10 : 00 : 27 編集
Re:ふむふむ
文章をお褒め頂き、ありがとうございます。
地の部分は皮肉っぽくしてみたので、そのせいもあるかもです。
【 2008 / 03 / 02 00 : 22 】
(°Д°;)アングリ
本当に、ちょっと昔にあったような話ですなw
気をつけなきゃw
(((゚Д゚;)))ガクブル
774っていう。 2008 / 02 / 28 ( Thu ) 07 : 14 : 01 編集
Re:(°Д°;)アングリ
東京の怖いお店をイメージしてみました。
ちょっと古くさいかもしれませんねw
【 2008 / 03 / 02 00 : 21 】
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