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空の青さが、やけにムカツク

『揺れるココロ、と高鳴るドウキ』__完全自作の小説・詩・散文サイト。携帯からもどうぞ。
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マンガ家志望である由希人は、出来上がった原稿を手に郵便局へ向かった。
今回の作品は力作であり、新人賞を獲れる自信があった。
郵便局は小さな町の支局で、局員は三人しかいなかった。
課長と書かれたプレートの置いてある奥の席には、中年の男性。受付には二十代の女性と、少し肉の付いた三十代後半の女性。
ふっくらとした女性の前には、サングラスをかけた、オシャレな格好をした男が立っている。小包を郵送するためか、荷物を横に置き、書類にペンを走らせている。
小柄な由希人は、標準身長の彼にコンプレックスを抱きながらも、若い局員と接することができ、多少の幸福感を味わった。
大きな茶封筒を計量すると、財布を取り出し、郵送に必要な切手の金額を局員が提示するのを待つ。
自動ドアが開き、キャップを目深に被った男が入ってくる。
男はマスクをして顔の下半分を、サングラスで目元を隠している。
長身なその男は鞄から拳銃を取り出すと、天井へ向けて威嚇射撃を放った。
撃音がして、天井に二つの穴が穿たれる。
男は銃を、手近に居た由希人のコメカミに当て、言った。
「金を寄越せ」くぐもった声。
二人の女性局員は短い悲鳴を上げて固まる。
奥の課長は咄嗟に非常ボタンを押した。
シャッターが閉まる。
郵便強盗は焦って辺りを見回す。
合気道三段の由希人は、その隙を見逃さなかった。
腕を振り上げ、突き付けられた銃口を逸らす。
引き金に指が掛かったままだったので、拳銃は由希人の耳元で轟音を発した。
銃弾は危うい所で由希人の髪を撫で、後ろへ流れていく。
由希人は強盗の腕を絡め取ろうとする。
銃口から噴いた炎によって、由希人の髪が燃えた臭いがする。一方で先程発射された弾は若い局員の眉間から骨を砕いて左右両脳の前頭葉を押し潰し、脳幹を断ち切った。さらには衝撃を受け切れなかった頭蓋骨後部が炸裂して脳ミソを派手にブチ撒けた。

由希人は強盗の腕に自分の腕を巻きつけると、肘関節をキメる。
短い呻き声を上げて、強盗は銃を落とした。
床に落ちた勢いで銃が暴発する。弾丸はオシャレな男の腹部から入り、肝臓と腸をズタズタに引き裂いて背骨を抉り、片方の腎臓を破壊してそこに留まった。男は悲鳴を上げて倒れ手足をバタつかせようとして、気付いた。両足が動かない。動かない所か感覚がまるで無いではないか。背骨を破壊されたせいだろう。抑えもきかず、膀胱に溜まっていた尿が尿器から漏れ出る様を見て、男は絶望的な気分と激痛に気絶した。

強盗は肘の関節攻撃への反撃をしようとして、自由な方の手でポケットからナイフを取り出した。
由希人は一見して、そのナイフが特殊な物であることに気付いた。
マンガの資料として買った、ナイフを扱った本で見ていたからだ。
そのナイフは飛び出しナイフ。
鞘の内部にバネが仕組まれ、ワンタッチのボタン操作で刃先が飛び出すようになっている、危険なナイフ。
先手必勝。
由希人はためらいもなく腕に力を込め、強盗の肘を逆方向に曲げた。
「ぐぎゃ」
関節の粉砕する音に重なって、強盗が絶叫する。
あまりの痛さゆえか、強盗はナイフを握り締め、ボタンを押してしまった。
発射されるナイフの刃先。
きらめく刃は由希人と無関係な方向へ飛んだ。そして休憩室へと逃避しようとした課長の頭の付け根に刺さる。ちょうど延髄の部分。課長はドアに手を掛けたまま、ずるずるとくずおれた。首から下への命令経路が遮断されたために心臓の鼓動と呼吸活動が停止し、課長は一瞬、パニックに襲われる。しかしさすがは管理職。冷静さを取り戻し、自らの死を予感する。酸素の供給が絶たれ、じわじわと死滅する脳細胞。混濁した意識の中で、彼は自分の不幸さを嘆いていた。

由希人は強盗を倒し、組み敷いた。
やがて、パトカーがサイレンを流して近付いて来る。

気絶をしそうになりながら、健気にもすべてを見ていた三十代の女性局員は、警察に救助されると開口一番、こう言った。
「犯人は、あの人よ」
指差す先には由希人の姿。
「え?オレ?」

なかなか誤解はとけなかったという。
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ちょっと
おはようございます。

今回のお話しは、私にはちょっともの足りなく感じます。
さらっと受けながせるような感じなので、そう感じてしまうのかもしれませんが。

誠に失礼ですが、最後の一文は、必要だったのでしょうか?
私から見ると、必要なかったのでは?と思います。
素人が口をはさむ事ではないですね。
失礼致しました。
たったかた~ 2008 / 03 / 17 ( Mon ) 07 : 21 : 22 編集
Re:ちょっと
今回のお話しは息抜き的な要素もあり、ギャグっぽくしてみたかったのですよ。
物足りなく感じられたのはそのせいかも知れませんね。

>素人が口をはさむ事ではないですね。

こちらも素人です、どんどん批判して下さい。
【 2008 / 03 / 20 23 : 37 】
局員w
確かに、誤解を解くのに、時間がかかりそうですねw
『正当防衛』も、時には『過剰防衛』で捕まりますもんねw

正義感も時には残酷な惨劇になってしまうものですね。
774っていう。 2008 / 03 / 18 ( Tue ) 19 : 59 : 49 編集
Re:局員w
実際の法的に見たら、由希人は何かの罪を犯しているような気がしてなりませんw
善意と行動のギャップって、現実にも結構あるような気がします。
【 2008 / 03 / 20 23 : 37 】
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