「――どうしてかな」
「……どうしてかしらね」
「……」
「――!何よ、その目は。私のせいだって言いたいの!?」
「いや――」
「私だって仕事してるのよ!あなたの方こそ仕事ばっかりで美奈素(ゔぃーなす)と会話もしてないじゃない!」
「待て待て、何も言ってないじゃないか。俺だって君は良くやってくれていると思っているよ。しかし高校生というのは微妙な時期だ。美奈素(ゔぃーなす)も俺を避けているようだし、どう接したらいいのか分からないでいるんだよ」
「まったく。あなたがそんなんだから」
「互いを責めるのはやめようじゃないか」
「何よ、ため息なんか吐いて――どうにかしてほしいのは私の方よ」
「だからさ……」
「分かったわよ」
「うん……」
「ああ、まったく……どうして万引きなんか――」
「……今回で、何回目だ?」
「忘れたわよ、そんなの」
「どうして何回捕まっても万引きしてしまうのかな」
「そんなこと分かるわけないでしょ、本人に聞いてみなさいよ」
「――それはそうなんだが……」
「はあ――確かに、捕まったその時々にはちゃんと反省しているのよ。でも毎回毎回――私にも、あの子のことが分からないわ……」
「どうなんだろうな。本気の反省じゃないんじゃないのか?」
「……」
「――おい」
「分からないって言ったでしょ!美奈素(ゔぃーなす)に直接聞いてみたらどうなのよ。あなたはいつもそうやって、あの子を私に押し付けてばっかり。そのくせ私の話を全然聞かないで――どう接したらいいのか分からないなんて、あなた父親でしょ!父親なら父親らしく、本気で美奈素(ゔぃーなす)にぶつかってみなさいよ」
「父親父親って、こういう時ばっかり俺に男らしさを要求するのはやめろよ」
「要求って何よ、何!?その言い方――」
「いつも君が言ってることじゃないか!男らしさとか女らしさとか、そういうことは一切やめにして、仕事も家事も二人でやろうって――」
「家事なんて、あなた全然やってないじゃない!それにね、私が言ってるのは要求っていう言葉遣いのことよ。上から目線でそんなふうに言われたら堪ったものじゃないわ」
「揚げ足取るのはやめろ。そんなもんニュアンスで伝わればいいんだよ」
「……ニュアンス?ニュアンスって何よ!あなたがそうやっていつも家のことはなおざりにしてるから美奈素(ゔぃーなす)もあんなことしちゃうんじゃないの」
「だからそういう揚げ足ばっかり取るんじゃない!」
「何よ偉そうに!初めに揚げ足取ったのはあなたじゃない!いつもそんなふうに口ばっかり偉そうに言って……そうよ。そうだわ。さっきも君は良くやってる方だと思うなんて口では言うけど、あなた全然家のことはしてないじゃない」
「ああ……何でこんな責め合うようになっちゃうんだ。もうやめようよ」
「――都合が悪くなるといつもそうやって逃げるのよね」
「……逃げてるんじゃないよ。話を元に戻そうと言っているんだ」
「同じことよ。美奈素(ゔぃーなす)のことだって家のことだって根っこは一緒」
「それは……」
「……それは、何よ」
「――いや。それはそうかもしれないな。うん。そうかもしれない」
「……何よ、一人で納得して。意味分かんない」
「美奈素(ゔぃーなす)は今、どこだ」
「二階。自分の部屋にでも居るんでしょ」
「そうか――行ってくる」
「え?」
「腹を割って話してみてくるよ」
「えっちょっと、ちょっとあなた、もう少し落ち着いてからでも――もうっ、今はそっとしておいた方がいいと思うのに……」
「……で、どうだったの」
「……駄目だ。部屋に入ったら、友達と電話でしゃべってたよ」
「友達と!?」
「ああ。楽しそうに馬鹿笑いしてた」
「!!」
「電話を切るように言ったら逆ギレされたよ」
「――あの子」
「強引に取り上げて電話を切ったんだが……何を言ってもだんまりで話を聞いているのか分からなかった。視線を合わせようともしない。糠に釘ってやつだな」
「何を言ってもって、あなた一方的に説教したわけじゃないんでしょうね」
「いくら俺だって、そんなに馬鹿じゃないよ。美奈素(ゔぃーなす)の本音が聞きたかったからな。本当に反省をしているのか、なぜ万引きを繰り返すのか、どう思っているのかを聞こうとしただけさ」
「どんな感じで話し掛けたのよ」
「うん……なるべく落ち着いて。矢継早に聞いても意味ないからな」
「……そう――最初はそんなものかもしれないわね」
「――うん。そうだよな、諦めちゃいけないよな。俺達の子供なんだから」
「!――そうよ。諦めないで、ゆっくりやりましょう。私達の子供なんですから」
「美奈素(ゔぃーなす)、美の女神はわがままだからな」
「ふふふ。そうね」
「ふー。それにしても疲れたよ」
「ええ」
「……でも、本当に上手くいくのかな。電話しながら笑ってた美奈素(ゔぃーなす)の姿を思い出すと、少し自信がなくなるよ」
「……でもやらなくちゃ。私達の子供なんだから」
「……そうだよな」
「……そうよ」
「……」
「……」
「……どうしてかしらね」
「……」
「――!何よ、その目は。私のせいだって言いたいの!?」
「いや――」
「私だって仕事してるのよ!あなたの方こそ仕事ばっかりで美奈素(ゔぃーなす)と会話もしてないじゃない!」
「待て待て、何も言ってないじゃないか。俺だって君は良くやってくれていると思っているよ。しかし高校生というのは微妙な時期だ。美奈素(ゔぃーなす)も俺を避けているようだし、どう接したらいいのか分からないでいるんだよ」
「まったく。あなたがそんなんだから」
「互いを責めるのはやめようじゃないか」
「何よ、ため息なんか吐いて――どうにかしてほしいのは私の方よ」
「だからさ……」
「分かったわよ」
「うん……」
「ああ、まったく……どうして万引きなんか――」
「……今回で、何回目だ?」
「忘れたわよ、そんなの」
「どうして何回捕まっても万引きしてしまうのかな」
「そんなこと分かるわけないでしょ、本人に聞いてみなさいよ」
「――それはそうなんだが……」
「はあ――確かに、捕まったその時々にはちゃんと反省しているのよ。でも毎回毎回――私にも、あの子のことが分からないわ……」
「どうなんだろうな。本気の反省じゃないんじゃないのか?」
「……」
「――おい」
「分からないって言ったでしょ!美奈素(ゔぃーなす)に直接聞いてみたらどうなのよ。あなたはいつもそうやって、あの子を私に押し付けてばっかり。そのくせ私の話を全然聞かないで――どう接したらいいのか分からないなんて、あなた父親でしょ!父親なら父親らしく、本気で美奈素(ゔぃーなす)にぶつかってみなさいよ」
「父親父親って、こういう時ばっかり俺に男らしさを要求するのはやめろよ」
「要求って何よ、何!?その言い方――」
「いつも君が言ってることじゃないか!男らしさとか女らしさとか、そういうことは一切やめにして、仕事も家事も二人でやろうって――」
「家事なんて、あなた全然やってないじゃない!それにね、私が言ってるのは要求っていう言葉遣いのことよ。上から目線でそんなふうに言われたら堪ったものじゃないわ」
「揚げ足取るのはやめろ。そんなもんニュアンスで伝わればいいんだよ」
「……ニュアンス?ニュアンスって何よ!あなたがそうやっていつも家のことはなおざりにしてるから美奈素(ゔぃーなす)もあんなことしちゃうんじゃないの」
「だからそういう揚げ足ばっかり取るんじゃない!」
「何よ偉そうに!初めに揚げ足取ったのはあなたじゃない!いつもそんなふうに口ばっかり偉そうに言って……そうよ。そうだわ。さっきも君は良くやってる方だと思うなんて口では言うけど、あなた全然家のことはしてないじゃない」
「ああ……何でこんな責め合うようになっちゃうんだ。もうやめようよ」
「――都合が悪くなるといつもそうやって逃げるのよね」
「……逃げてるんじゃないよ。話を元に戻そうと言っているんだ」
「同じことよ。美奈素(ゔぃーなす)のことだって家のことだって根っこは一緒」
「それは……」
「……それは、何よ」
「――いや。それはそうかもしれないな。うん。そうかもしれない」
「……何よ、一人で納得して。意味分かんない」
「美奈素(ゔぃーなす)は今、どこだ」
「二階。自分の部屋にでも居るんでしょ」
「そうか――行ってくる」
「え?」
「腹を割って話してみてくるよ」
「えっちょっと、ちょっとあなた、もう少し落ち着いてからでも――もうっ、今はそっとしておいた方がいいと思うのに……」
「……で、どうだったの」
「……駄目だ。部屋に入ったら、友達と電話でしゃべってたよ」
「友達と!?」
「ああ。楽しそうに馬鹿笑いしてた」
「!!」
「電話を切るように言ったら逆ギレされたよ」
「――あの子」
「強引に取り上げて電話を切ったんだが……何を言ってもだんまりで話を聞いているのか分からなかった。視線を合わせようともしない。糠に釘ってやつだな」
「何を言ってもって、あなた一方的に説教したわけじゃないんでしょうね」
「いくら俺だって、そんなに馬鹿じゃないよ。美奈素(ゔぃーなす)の本音が聞きたかったからな。本当に反省をしているのか、なぜ万引きを繰り返すのか、どう思っているのかを聞こうとしただけさ」
「どんな感じで話し掛けたのよ」
「うん……なるべく落ち着いて。矢継早に聞いても意味ないからな」
「……そう――最初はそんなものかもしれないわね」
「――うん。そうだよな、諦めちゃいけないよな。俺達の子供なんだから」
「!――そうよ。諦めないで、ゆっくりやりましょう。私達の子供なんですから」
「美奈素(ゔぃーなす)、美の女神はわがままだからな」
「ふふふ。そうね」
「ふー。それにしても疲れたよ」
「ええ」
「……でも、本当に上手くいくのかな。電話しながら笑ってた美奈素(ゔぃーなす)の姿を思い出すと、少し自信がなくなるよ」
「……でもやらなくちゃ。私達の子供なんだから」
「……そうだよな」
「……そうよ」
「……」
「……」
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ご無沙汰してます(^-^;
今回は、とても遠くて近い話でしたな。
ハレさんの、『喧嘩しながら、かつ、冷静に』の表現がうまくて好きです。
(^-^)
美奈素が友達と馬鹿笑いしてるのが心理的にも、描写的にも好きな作品でした。
ハレさんの、『喧嘩しながら、かつ、冷静に』の表現がうまくて好きです。
(^-^)
美奈素が友達と馬鹿笑いしてるのが心理的にも、描写的にも好きな作品でした。
Re:ご無沙汰してます(^-^;
ありがとうございます。
美奈素の読み仮名を全部平仮名にしたかったのですが、出来ませんでしたよ。
それだけが残念です。した。
美奈素の読み仮名を全部平仮名にしたかったのですが、出来ませんでしたよ。
それだけが残念です。した。
Re:『ヴ』
ありがとうございます。
助かりましたm(_ _)m
助かりましたm(_ _)m
Re:残念(>_<)
読めないわけではないので大丈夫ですよ。キニシナイで下さい。
カタカナよりはこっちの方がいいですし。
…と、思ったらちゃんと半角でできました。こちらの勘違いでした。
カタカナよりはこっちの方がいいですし。
…と、思ったらちゃんと半角でできました。こちらの勘違いでした。
Re:無題
会話だけの進行が功を奏したみたいですね(^_^)
うまく想像力を刺激できたようで良かったです。
うまく想像力を刺激できたようで良かったです。