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空の青さが、やけにムカツク

『揺れるココロ、と高鳴るドウキ』__完全自作の小説・詩・散文サイト。携帯からもどうぞ。
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 朝日を浴びて
 水面が光っている。
 さざ波が
 きらきらと反射をしている。

 その岸辺に
 白い物が浮かんでいる。
 今にも波に揺られ
 流されるように浮かんでいる。

 白い物に
 フナムシがたかっている。
 小さな音で
 ピチャピチャと肉を食っている。

 カニがハサミで肉を削ぎ
 その身を食べている。
 小エビが跳ね回り
 宴に酔いしれるよう歓喜している。

 魚が水中から突つき
 その黄色い脂肪を食らっている。
 有象無象の微生物たちが
 食べカスに群がっている。


 空中から
 水面を滑空し
 灰色の翼をはためき
 貪欲な鳥たちが獲物を突つくつつ魚をも狙っている。

 ぶよぶよに水を吸い
 或いは黒く腐りかけ
 破れた皮膚は
 生前の面影も無く。

 70%の水分が
 90%くらいにまで上昇した結果
 筋肉は易々と解け
 さざ波にすら引き千切られる。

 でっぷりと膨らんだ肉体は
 傷だらけの肉塊は
 四肢と首が
 骨だけでようやく繋がっているだけだ。

 人間が
 何を思ったか
 人間が
 自らの意思で入水した結果。

 もはや人間は
 腐乱した人間は
 鳥や水中に棲まう者の餌食となり
 保有していた菌の温床となる。

 時折
 腹腔から漏れるガスが
 ブゥと音を鳴らし
 虚しさを増幅させる。
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「脳波を抽出イメージ化する事には成功したが」ラボの中で博士が言う。「余り無作為過ぎるのが問題だ」
「そうですね」頭にバンドを巻いた助手が答える。「被験体になって実感として感じたんですが、自分の言いたい事や考えてもみない事がモニタやスピーカから流れてくるのには混乱してしまいました」
「うむ。やはり意識のみを取り出し、無意識のノイズをフィルタにかける必要があるな」
 助手が頭のバンドを外す。
 バンドの額に当たる部分の内側には、人間の脳波を受信する精巧な電子回路が組み込まれいるのだ。

 数ヵ月後、彼等の研究は徐々に進み、意識のみを取り出す事に成功した。
「ようやく出来ましたね」バンドを外しながら助手は言った。
「いいや、まだだ」博士は首を振る。「無意識を除去する事は出来たが、まだまだノイズが多すぎる。私達の目的は、言葉よりも、もっと直接的に他者とコンタクト出来るツールを造り出す事にあるのだ。『意識のだだ漏れ』では余計な混乱を招く元となる。『他者へ伝えたい意識だけを伝達する装置』でないと駄目なのだ」
「確かにそうですね。相手への悪感情を曝してしまっては、この装置で人間関係が悪化し、争いの元凶になってしまいます」
「うむ」博士は助手の言葉に頷く。「そういう事だ。より技術を研磨しなければならない」

 そして数年が経過した。
「邪魔な意識を排除する事が、こんなに難しいとは思いませんでした」
「それくらいは想定済みだよ」博士は助手に顔を向けた。「君もまだまだ青いな」
 しかし疲労の残る二人の顔には充実した笑みが表れていた。
 なぜなら彼等はその難題を、つい先程の実験によって克服した事を確認出来たからだ。
「次はこの装置間同士での送受信法を確立するという障壁をクリアするだけですね」
「いや」博士は笑みを崩さない。「送受信に問題は無い。最近開発された『反物質粒子』によって対応する事が出来る。応用すれば、任意の他者数人との同時交信も可能だ」
「えっ! 反物質の存在が認められたんですか」
 ふふふと笑いながら博士は満足そうに言う。
「研究に打ち込む姿勢は立派だが、視野狭窄に陥ってはいけないぞ。他の分野へ視線を向ける事も必要だ」

 さらに数年後。
 二人の開発した「マインド・スキャン」は、会社での企画会議等で活躍していた。
 送信者の言わんとしている事がダイレクトに伝わり、会議は効率的に、より円滑な物へと進化した為だ。
 それは世界的な大企業から私公立の小中学校での教員会議にまで広く用いられている。

 それから数年後。
 遠隔機能や、有機LEディスプレィゴーグルと連動したナビゲーションシステムの構築、マインド・スキャンゲーム等の出現と、大量生産化の為のコスト削減による値下げの状況下で、マインド・スキャンは個人レベルでの需要が高まった。
 破竹の勢いは留まる事を知らず、携帯電話やパソコンをも駆逐していった。

 その数十年後。
 人間は不必要となった「言葉」という相互間コミュニケーションツールを失った。
 他者にイメージや感情、想いを伝える完璧なマインド・スキャンの前で、不完全な「言葉」が淘汰されるのも仕方の無い事と思われた。

 そのまた数年十後。
 世界は文字を喪失し、紙は姿を消しインターネットは閉ざされた深い眠りに就き、殺那的な物となった。

 その後、数百年。
 疑似テレパスと化した人類は、次第に没落していった。
 一部の少数民族を置き去りにしたまま。

 そして地球は、万単位で太陽を周期した。
 残されていた少数の人類は、再び文明を築き始めた。
 人々は石器を捨て鉄を取り戻し、幾多の地域的な戦闘を各地で繰り返した。
 結果、村から国へと成長する。
 だが地域的な戦闘は国家間の争いへと姿を変え、やがて世界的な規模の戦争を引き起こし、核を生み出した。
 世界は傷付き、平和を求めた。
 各地での紛争は引き続き行われているが、国同士の連盟が発足し、表面的な平和を手に入れる事には成功した。
 彼等の物好きな一部の連中は言う。
「超古代文明では、人間は言葉を使わずに意志の疎通の出来た、テレパス能力があったのではないか」と。
  

「ドラゴンは古くから宝を守る地の霊として崇められていた。
 この種の伝説は、主に西洋での話が多い。
 時にドラゴンは悪者扱いをされるが、それは勇者が宝物と対峙した場面において、勇者を正当化させるために貶められている事が多々ある。
 いわばそれは、戦士を勇者へと格上げさせるためのイニシエーションとして捉えられるべきものである。
 本邦にも、スサノオとヤマタノオロチ伝説があるため、これと対比出来るかもしれない。
 だが、日本の竜とは、その姿形から、うねる川の象徴として水神に奉られるケースの方が多い。そして竜は大陸から流入され竹取物語の中でも五つの宝の内の一つとしても拡がり、混在が始まってしまう。
 大陸、つまり古代の中国大陸の、ある種族の神話中に、ショクインという最高神と見られる資質を有した竜の姿をした存在が、山海図絵にも記載されている」
 ノート型PCを前にして、ユウジは困った顔をする。
 ディスプレイに書き込んだ文章は、神話学で提出するなめの論文なのだが、思うように捗っていないのだ。
 それは西洋から日本、さらに中国大陸にまで範囲が広がっていることからも見受けられる。
 まとめられないのだ。
 本来、彼は『西洋においてのドラゴン観の変遷』という主旨の論文を書くはずだったのだが、対比のために日本を挙げたせいで脱線が始まってしまった。
 彼は内省する。
 古くからの西洋とは、十世紀から十三世紀の頃だ。主にゲルマン、ヴァイキング、ノルウェー系統のエッダやサーガの時代。つまり北欧神話を軸としている。
 対比するには━━南欧?
 南ヨーロッパ。
 しかしこの時代は全ヨーロッパが動乱の時期だったのだ。先に上げたヴァイキング同様、東西に分裂したローマ帝国はオスマン帝国の進出によって弱体化し、疲弊していた。
 待てよ。
 ローマ帝国が分裂していたにしろ、存続していたと言うことは、国教はキリスト教か?
 キリスト教でのドラゴンは━━悪。蛇とサタンと同一視されていなかったか。
 キリスト教は土地神を悪視、吸収して広がった面もある。その意味では仏教と似ているが、仏教が相手にしたのはヒンドゥー教だったのに対して多岐に渡る。
 ギリシア、ローマ神話、その元になったアヴェスタ、バビロニア神話、そしてエジプト神話。
 ━━アヴェスタ、つまりゾロアスター教はペルシアで生まれたためにヒンドゥー教ともつながっているが、それは別のルートだったかな。
 うーむ。
 と、ユウジは考える。
 そっち方面に行くと、もうほとんど分からない。けれど今までに上げた神話の中では、ドラゴンって邪龍としての見方が多い気がする。
 じゃあ同じなのか?
 やっぱり西洋と東洋の対比の方が良いのかなぁ。
 でもなぁ、そもそも竜とドラゴンのイメージ、っていうか形態からして違うし。
 東洋の竜は蛇系統、西洋のドラゴンは恐竜やトカゲみたいな爬虫類。
 ああもう、どうしよう。
 もう一回、初めっから見直すしかないかぁ? 別のテーマにする?
 でもドラゴンに関する資料しか集めてなかったし、今から別テーマを探す時間もないし━━
 気がつくと、ユウジは二時間以上も悩んでいた。
 建設的な考えは思い浮かばなかった。
 いつしか妥協点を見つける事へと腐心している。だが彼はその事にすら気づかない。
 最近、徹夜が続いているせいかもしれなかった。
 彼の携帯電話が振動し、ランプを光らせ着信を告げる。
 ユウジは条件反射的に電話に出た。
 相手は彼の友人。
「えっ、合コン?」ユウジは言う。「一人ドタキャンしたのか、分かった行く行く」
 いつもの理由で、連日の徹夜が今夜も始まりそうだ。
 彼はモニターの論文を削除すると、集めていたドラゴンに関する資料を換骨奪胎してテキトーに仕上げる。
 着ていく服を慎重に選んで、いそいそと夜の街へと身を投じた。
  

 熱くなったら駄目なんだ。
 熱くなった 負けが決まる。
 所詮は暇潰し。
 娯楽と割り切る方が良い。

 パチンコ パチスロ 競馬 宝くじ toto ロトシックス
 他も含めたすべてのギャンブル。

 本気になるなよ。
 なったら破滅。

 当たるか外れるかのギリギリな緊張は際限まで高まり 当たった時に溢れる脳内物質が多量に分泌される。
 そこが入り口。
 つながった快感経路は消えずに残る。

 ギャンブルは時に麻薬。
 依存から逃れるのは難しい。
 ドフトエフスキーすらもが嵌まった魔力。

 ギャンブルとは 金を賭けるものではなく 金を棄てる行為。
 勝っても負けても永続する負のループ。

 いずれは無くなる運と金。
 先に待つのはヤミ金地獄。

 ギャンブルなんて
 ギャンブルなんて
 ギャンブルなんてクソ喰らえ!
  

「『まる』と『まぁる』の紹介でやって来ました」全身黒スーツの男が言う。
「はい?」あたしは警戒もせずにドアを開けてしまったことに後悔した。見るからに怪しい。「誰の紹介ですって?」
「ですから『まる』と『まぁる』の紹介です」
「あの、まったく心当たりが無いんですけれど」
「それは困りました」黒スーツの男は、これ以上困ることはないであろう程の表情をした。
 そんなに困ることって、いったい何なのだろうと思いつつ、あたしは彼のリアクションに、少し引いた。
「まぁ良いや」男は急に笑顔になった。
 さっきまでの困り具合は何だったのだろう。
 黒スーツの男は右手を差し出すと、あたしに言った。
「『ぬっぴん』を返して下さい」
「はい?」
「『ぬっぴん』ですよ」相変わらず思いっきりの笑顔で彼は言う。
「『ぬっぴん』? ですか……何ですか、ソレ?」
「えっ、だから『ぬっぴん』ですよ『ぬっぴん』」
「あの」あたしはドアを閉じようとしたのだけれど、男の鬼気迫る眼力に立ち竦んでしまった。「初めて聞くんですけど……その『ぬっぴん』って━━」
「えええええっ!!」
 尋常ではない男の反応に、あたしの恐怖は高まり腰が抜けそうになった。
「そんな」男は狼狽している。あたしはこれ程までに慌てた人を見たことがない。「そんな、そんな、そんなそんなおかしいですよ。だってあなた」男はあたしのフルネームを言った。「━━さんでしょ?」
「……確かにそうですけれど」あたしは薄気味の悪い感じに包まれた。「何かの手違いじゃないんですか。あたしには『まる』とか『まぁる』とか『ぬっぴん』だとか、全然意味が分からないですし」
 男は急いで携帯電話を取り出す。狂ったように発汗し、ボタンを操作している。
 あたしはその隙に部屋へ戻ると、ドアを閉じて鍵を締めた。
 けれども、すぐに緊張は解けない。ワケの分からない不審な男が、壁一枚を隔てて、まだそこに居るのだから。
 警察に通報しようかどうしようかと迷っている内に、外からあの男の声が聞こえてきた。ドアに耳を当てて、そっと聞き耳を立てる。
「━━じゃあ……ああ……そういうことでしたか。同姓同名で━━この人は関係ないと……」
 どうやら男の手違いらしい。
 良かった。これであの男も帰ってくれるだろう。だけど『まる』とか『まぁる』とか『ぬっぴん』とかって何だったんだろう。
 あたしはもう少し、話の内容を聞き続けてみたくなった。
「━━けど、どうしましょう。てっきり、この人が受け取ってると思って、合い言葉、言っちゃいましたし」
 ああ、『まる』と『まぁる』の紹介っていうのは合い言葉だったのね。
「すみません、こっち側の人間だと思って『ぬっぴん』のことまで訊いてしまいまして━━」
『こっち側の人間』? 何のことだろう。その『ぬっぴん』とやらを取り引きしている人っていう意味?
「ああ、はい、すみません、すみません━━はい。分かりました」
 男の声に続いて、携帯電話を折り畳む音が聞こえた。
 ……このまま帰って欲しい。
 あたしはドアの覗き窓から様子を窺う。
 男の目が、向こう側から覗いていた。
「そこで、聞いていたんですね」男が言う。「ま、良かった。おかげで面倒なことをしなくて済みそうです。ありがとうございました」
 何を言っているのだろう。この男は狂っているのだろうか。
 ドアから離れようとした途端━━パシュパシュッとドアに穴が開き、体に衝撃が走った。
「すみませんね。極秘事項な物ですから」男の足音が遠ざかっていく。
 熱い血液が傷口から吹き出し、銃で撃たれたのだと、やっと分かった。
 でも、何この不条理。あたしは人違いされて死ぬの? 『ぬっぴん』なんてふざけた名前の物に振り回されてる妙な連中たちに巻き込まれて?
 ━━ああ、早く救急車呼ばないと。それとも警察? 頭がクラクラしてきて考えが纏まらない。
 ふふふ。何だか笑えてくるわね。間抜けな組織に間抜けな暗殺者に間抜けな被害者。これで本当に死ぬなら、あたしの人生、何だったのかしら。
  

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