初めて来たせいもあり、清香は伯父さんの家で浮かれていた。
今日は楽しみにしていた花火の日。
五歳の清香にとっては、初めての花火大会だった。
興奮して昼寝もせず、彼女は画用紙に絵を描いている。
クレヨンで描かれた絵は、彼女の想像した花火の絵だ。
赤い渦巻きの外側に、放射状の線が広がっている。それは花火というよりも、むしろ太陽のようであった。
そんな絵がひとつの画用紙にいくつも描かれている。
しかし三時を過ぎた頃には雲行きが怪しくなってきた。
黒い雲が押し寄せ、ポツリポツリと雨が落ちてくる。
「雨降ってきたよー」清香は半泣きで母親に言う。「雨降ってきたー」
母親は清香の心中を察し、頭を撫でる。
「大丈夫よ、夕立だからすぐに止むわ」
「ホント?」
「ええ。本当よ」
なおも不安げな清香に、母親は力強く言い切った。
清香は窓に張り付き外を見る。
晴れ間が戻るのを心待ちにしている。
庭先にあるブロック塀を雨の滴が黒く塗り潰していく。
雨足は徐々に強くなる。
清香は少し、悲しくなった。
しかし十分も過ぎるとピークを迎え、夕立は嘘のように去っていった。
雲の切れ間に虹が見える。
「ママ、虹だよ!虹」清香は指差し叫ぶ。
子供特有のテンションの高さで彼女ははしゃぎ回った。
兄夫婦の前で、清香の両親はバツが悪そうにしている。宥めようにも彼女の興奮は簡単に治まりそうにない。
すいませんと謝る母親に向かって、子供のいない嫂はいいのよと笑って答える。
騒々しい時間はあっという間に過ぎ去る。
太陽の熱で夕立の跡も消え、緩んだ暑さも力を取り戻す。
やがてヒグラシが鳴き始め、誰そ彼時の黄色い色が空を覆う。
はしゃぎ疲れたのか、清香はうつらうつらと船を漕いでいる。
眠らないように励ます両親。
温かい目で見守るもう一組の夫婦。
「お店に行って綿飴でも買ってこようか?」
伯父の提案に、清香は目を輝かせる。眠気は一発で吹き飛んだようだった。
「ねぇママ、行ってもいいい?」
「たまにだから仕方がないわね」母親は微笑む。「皆で行こうか」
清香を浴衣に着替えさせると、五人揃って家を出る。
外は夜店の匂いで溢れていた。
焼きソバの匂い、トウモロコシを焦がした匂い、人の匂い、祭りの匂い。
清香は母親と手を繋ぎ、空いた手に綿飴を持っている。腕に巾着を引っ掛け、機嫌良く歌を歌う。
人ごみのせいで歩きにくかったが、彼女はそれすらも楽しんでいるようだった。
――ドン ドドン
初めの花火が音を立てる。
あまりの音の大きさに、清香は身を硬くした。
人の流れが一瞬止まり、皆が空を見て歓声を上げる。
しかし大人が多いせいで清香には花火が見えなかった。
次の花火まで時間が開く。
どうやら初めの花火は大会開始の合図だったようだ。
その間に五人は河原に移動し、席を確保した。
ここなら清香にも、花火が良く見えるだろう。
すでに日は暮れ、すっかり夜空になっている。
そして――
ヒュルヒュルと魂のように糸を引いた弾が天を昇る。
飛沫のような花が開き、遅れて炸裂音が、そして火花の散る音までが聞こえてくる。
燃える空、爆発音。
あまりの迫力に、清香は恐がり泣き出した。
清香の様子を、四人の大人は笑顔で見守っていた。
今日は楽しみにしていた花火の日。
五歳の清香にとっては、初めての花火大会だった。
興奮して昼寝もせず、彼女は画用紙に絵を描いている。
クレヨンで描かれた絵は、彼女の想像した花火の絵だ。
赤い渦巻きの外側に、放射状の線が広がっている。それは花火というよりも、むしろ太陽のようであった。
そんな絵がひとつの画用紙にいくつも描かれている。
しかし三時を過ぎた頃には雲行きが怪しくなってきた。
黒い雲が押し寄せ、ポツリポツリと雨が落ちてくる。
「雨降ってきたよー」清香は半泣きで母親に言う。「雨降ってきたー」
母親は清香の心中を察し、頭を撫でる。
「大丈夫よ、夕立だからすぐに止むわ」
「ホント?」
「ええ。本当よ」
なおも不安げな清香に、母親は力強く言い切った。
清香は窓に張り付き外を見る。
晴れ間が戻るのを心待ちにしている。
庭先にあるブロック塀を雨の滴が黒く塗り潰していく。
雨足は徐々に強くなる。
清香は少し、悲しくなった。
しかし十分も過ぎるとピークを迎え、夕立は嘘のように去っていった。
雲の切れ間に虹が見える。
「ママ、虹だよ!虹」清香は指差し叫ぶ。
子供特有のテンションの高さで彼女ははしゃぎ回った。
兄夫婦の前で、清香の両親はバツが悪そうにしている。宥めようにも彼女の興奮は簡単に治まりそうにない。
すいませんと謝る母親に向かって、子供のいない嫂はいいのよと笑って答える。
騒々しい時間はあっという間に過ぎ去る。
太陽の熱で夕立の跡も消え、緩んだ暑さも力を取り戻す。
やがてヒグラシが鳴き始め、誰そ彼時の黄色い色が空を覆う。
はしゃぎ疲れたのか、清香はうつらうつらと船を漕いでいる。
眠らないように励ます両親。
温かい目で見守るもう一組の夫婦。
「お店に行って綿飴でも買ってこようか?」
伯父の提案に、清香は目を輝かせる。眠気は一発で吹き飛んだようだった。
「ねぇママ、行ってもいいい?」
「たまにだから仕方がないわね」母親は微笑む。「皆で行こうか」
清香を浴衣に着替えさせると、五人揃って家を出る。
外は夜店の匂いで溢れていた。
焼きソバの匂い、トウモロコシを焦がした匂い、人の匂い、祭りの匂い。
清香は母親と手を繋ぎ、空いた手に綿飴を持っている。腕に巾着を引っ掛け、機嫌良く歌を歌う。
人ごみのせいで歩きにくかったが、彼女はそれすらも楽しんでいるようだった。
――ドン ドドン
初めの花火が音を立てる。
あまりの音の大きさに、清香は身を硬くした。
人の流れが一瞬止まり、皆が空を見て歓声を上げる。
しかし大人が多いせいで清香には花火が見えなかった。
次の花火まで時間が開く。
どうやら初めの花火は大会開始の合図だったようだ。
その間に五人は河原に移動し、席を確保した。
ここなら清香にも、花火が良く見えるだろう。
すでに日は暮れ、すっかり夜空になっている。
そして――
ヒュルヒュルと魂のように糸を引いた弾が天を昇る。
飛沫のような花が開き、遅れて炸裂音が、そして火花の散る音までが聞こえてくる。
燃える空、爆発音。
あまりの迫力に、清香は恐がり泣き出した。
清香の様子を、四人の大人は笑顔で見守っていた。
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Re:花火どーん☆
自分も花火が苦手だった口ですよ。
戦争みたいだと思って怯えたり(^_^;)
戦争みたいだと思って怯えたり(^_^;)