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空の青さが、やけにムカツク

『揺れるココロ、と高鳴るドウキ』__完全自作の小説・詩・散文サイト。携帯からもどうぞ。
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 ぼくはコンビニの店員。
 彼女は常連客。
 いつも同じアイスクリームを買いにくる。
 ぼくの、片想い。
 彼女に恋人が居るのか居ないのか、それすら分からない。
 唯一のやりとりは、レジの前。
 ぼくは顔を赤らめ、お釣りを出す手が震える。
 彼女の手を汚してはならない。
 指先が触れぬ様、さっと硬貨を渡す。
 付き合いたいけれど、それは出来ない。
 してはいけない気がする。
 いや、それは嘘だ。本当は付き合いたい。
 けれど、どうやって?
 告白、か。
 でも、失敗は許されない。
 彼女は二度と来なくなるだろう。
 いや、それ以前に、ぼくは恐い。
 告白をする勇気がない。
 それに、いきなりコンビニ店員から「好きです」なんて言われたって戸惑うだけだろう。
 ここは遠回りに何気ない顔をして、少しずつ親しくなって、と、思っても話題がない。
 何を話すべきなのか。
 左手にリングが無いことは確認してある。やはり恋人の有無を尋ねてからの方が賢明ではないだろうか。親しくなってから恋人との話を持ち出されたら、心の傷が深くなる。
 なら、どうやって尋ねる?
 彼女がぼくの好意を読み取って、話かけてくれたら良いのだけれど、世の中、そんなに甘く無いことは分かってる。
 だから連日連夜、ぼくは悩んでいる。
 来店した、彼女に見とれている時以外。
 ああ、彼女はどうしてこんなに、こんなにぼくの心を掴んで放さないのだろう。
 いや、それは嘘だ。ぼくの心が彼女を求め、執着しているだけなのだ。
 彼女の心を掴まえなければならないのはぼくの方で、その想いが募る程に反比例して心は萎縮し、話せなくなる。
 なぜなら、振られるのが恐いから。
 そして、ぼくは堂々巡りを繰り返す。
 ああ、頭がどうにかなりそうだ。
 いや、既におかしくなっているのかもしれない。
 恋をするとは、脳内物質の一種であるドーパミンが放出されている所の状況によってシナプス間に於けるニューロンの受容体に作用して多幸性を増す状態を差すことであって、これは酩酊作用と言っても良いものであり、この事例を今のぼくに当て嵌めるならば、ぼくは彼女に中毒症状を起こしているのであって、彼女すら居なければ、ぼくもこんなに悩まないで済むのではないだろうか。
 そう思うと、ぼくは彼女に支配されているとも言える。それが彼女の意思と無関係であり、ぼくからの一方的なものであったとしても。
 彼女の支配から逃れ、この悩みを一掃するためには、ぼくは殺さなければならないだろう。
 勿論、彼女のことを。
 いや、ちょっと待って。何かがおかしい。
 間違っている。
 けれどどこが間違っているのだろう。
 分からない。
 ぼくには、今のぼくには解らない。
 だけど確かなことはひとつだけ。
 想い焦がれる彼女に対し、ぼくは同じくらいの殺意を抱いている。
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